死神が教えてくれたこと
人は「失う」ことを恐れる生き物です。
行動経済学の「プロスペクト理論」によれば、私たちは得る喜びよりも、失う苦痛のほうを強く感じます。
この理論を“生と死”にあてはめてみましょう。
私たちが“死”を恐れるのは、“生”を失いたくないからです。
「生」とは何か?
では、「生」とは一体なんでしょうか。
食べ、寝て、働く――肉体の営みこそが“生”なのでしょうか。
それとも、思い、悩み、誰かを愛し、夢を見る――魂の営みこそが“生”なのでしょうか。
ここで哲学の世界にある「二元論(デュアリズム)」という考え方が浮かび上がります。
肉体と魂は別物であり、人間の本質は肉体ではなく“魂”に宿る、という見方です。
「死」は肉体の終わりであり、魂の終わりではない
もしこの二元論を受け入れたなら、「死」は肉体の終わりに過ぎません。
“魂”は記憶や志、思い出、遺された言葉の中に生き続けます。
つまり、死とは「自分という存在が完全に消えること」ではなく、
「形を変えて次の誰かへと受け継がれる」ものなのです。
志が受け継がれる限り、「生」は終わらない
「自分が生きた証」が誰かの中に残り、誰かが志を継いでくれれば――
それは“生”が新たな形で続いていくということ。
だからこそ、「死神が教えてくれたこと」はこうかもしれません。
「君の“生”は、君の“志”が続く限り終わらない」
「肉体の死を恐れるな。魂を託せる誰かがいれば、君はもう“死”を超えている」
失うことを恐れない“生”へ
プロスペクト理論が示す“損失回避”は、生存本能の現れでもあります。
しかし、もし「失っても残るもの」に気づくことができたなら、
私たちは“恐れ”から解放され、より自由に、より深く生きられるのかもしれません。
死神はこうして、静かに、私たちに問いかけてくるのです。
――「あなたが本当に失いたくないものは何ですか?」と。
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